どのような研究をしているのですか?
「私はなぜ生きているの?」「幸せってなに?」「ロボットもいつかは心を持てるようになるのかな?」「この世に正義なんてあるんだろうか?」―――このような疑問は、子どもの頃に誰もが一度は考えたことがあるでしょう。考えているうちに頭がくらくらしてきて、不思議な気持ちを味わったことのある人も多いのではないでしょうか。こうした哲学的な疑問をめぐって、子どもも大人(教師)も一緒になってサークルを作って座り、対話を通して考えを深めていく「哲学対話」「子どもの哲学 Philosophy for Children(P4C)」と呼ばれる教育実践があります。私は、1970年代にアメリカから全世界へと広がったこの「哲学対話」教育について、哲学と教育学の両方の側面から研究しています。ただ研究するだけでなく、開智学園の複数の学校(開智日本橋学園中学・高等学校、開智中学・高等学校など)の「道徳」の授業で子どもたちと実際に哲学対話を行い、哲学対話教育の実践家としても活動しています。
どのような研究をしているのですか?
私自身も中学生の頃から、「絶対に正しく確実なことなんて、この世の中に本当にあるんだろうか?」とか、「もしかしたら、この世界はそもそもすべて僕が見ている夢であって、そうじゃないって単に思い込んでいるだけなんじゃないだろうか?」とかいうような、今にして思えば素朴な(しかし重要な)哲学的な疑問を考えるのが好きな子どもでした。夕方の通学路で一人でもやもやと考えながら家に帰ったり、ときどき気の合う友達と一緒にしゃべったりしていました。でも、自分の中ではそれは「ちょっと変わった遊び」で、まさか将来の仕事に繋がるとは思っていませんでした。
その後大学に入り、1年生の前期に何気なく受講した哲学入門の授業で、いい年をした中年の先生がまさにこのような疑問をひたすら真剣に論じている姿を見て、衝撃を受けました。こんな子どもじみた疑問も学問の対象となることや、一歩ずつゆっくり・じっくり考えていけば、一見すると答えが出ないように思える哲学の議論も着実に前に進められる(深められる)ことを知って、夢中になりました。大学生・大学院生の間は、哲学の「研究」をしていたというよりも、哲学的な疑問を肴にして、仲間たちと「ああでもない、こうでもない」と語り合い、哲学で「遊び尽くして」いた気がします。
その後、再びまったくの偶然から、海外では小学生のうちから、こうした哲学的な疑問についてみんなで考え、議論する教育があることを知り、またしても衝撃を受けました。考えることの楽しさ、自分の頭で哲学することの面白さを、日本でもたくさんの子どもたちに知ってほしいと思うようになり、哲学対話教育の研究と実践を始めました。
どのような研究をしているのですか?
どのような研究をしているのですか?
土屋陽介 准教授
千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程単位取得後退学。博士(教育学)(立教大学)。2012年から、学校法人・開智学園の複数の学校で、独自の教科「哲学対話」の専門教員として勤務。開智国際大学、立教大学、茨城大学、静岡大学等の非常勤講師を経て、2020年4月より現職。
教員紹介 -土屋陽介 准教授|教育学部
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