お知らせ

「鼎談 “ショートショートの神様”星新一を語る」が、終了しました。

11月14日、ゲストに星新一氏の次女・星マリナ氏、作家・新井素子氏を迎え、本学・田中二郎准教授による進行で、「星新一を語る」(平成27年度柏市立図書館・市内大学図書館合同企画)が行われました。開催会場のこもれびホールは、遠方から駆け付けた方、また熱烈なファンだという小学生とそのご両親といったコアな星新一ファンの熱気を感じた会となりました。話題は、星作品の特徴から、星新一的逆転の発想エピソードなど尽きることなく、2時間あまり。皆さん「楽しかったです。来てよかったぁ」と満足された様子でした。

星新一講演会写真(2)    星新一講演会写真(4)

星新一講演会写真(1)-1

会は、星新一との関係を語ることから始まりました。マリナさんは、星新一作品を管理する「星ライブラリ」の代表で、作品の英訳などもしています。「父の作品管理はずっと母がやっていたのですが、6年前に引き継ぎました。でも、“星家の長男”は、私じゃないんです。ここにいる新井さんなんです」。星家は、マリナさんと姉のユリカさんの二人姉妹だが、作家・星新一の跡継ぎは新井氏だというのです。マリナさんは、ハワイ在住なので、代わりにお墓参りもしてくれる、と。新井氏は、星新一、小松左京、筒井康隆が審査員を務めた第一回「奇想天外SF新人賞」(1978年)の佳作受賞者(入選該当作なし)。「それが、私のデビュー作品となったわけですが、星さん一人が熱烈に押してくださったらしいんです。その責任を感じてか、本当に色々面倒をみていただきました。そのときまだ高校生でしたから、新幹線グリーン車に乗るのも、高級料亭に行くのも、何もかも星さんにデビューさせてもらった感じですね」。
そして、進行役の田中准教授は、中学生のときから星作品のファンで、星新一公式サイトのエンジニア。現在、星作品の全集を熟読する日々だと言います。「星さんの作品は、ちっとも古くならないどころか、現在に通じることばかりで、未来予知がすごい!たとえば『声の網』なんて、今でこそインターネットという網が張り巡らされた社会にわれわれ恐怖しているのに、約30年前、電話の存在でその恐怖を描いているわけでしょ」、という田中准教授の言葉に、マリナさんは、「SFってたいてい “敵”みたいなものと、主人公たちが闘っているけど、星作品は、これこれこうなりました、で終わり。絶対闘わないんですよ」と、分析します。
新井氏は、作家の視点から、こう述べます。「星さんは、書かないでもわかるだろうって、結末まで書かない。読者に放り投げちゃう。自分の作品に自信があるし、読者を信頼しているっていうことでしょうね。なかなかできないことです。それと、最近の小説はくどくど人物の内面描写をするけど、星さんは人を描くのは類型のみで、いわゆる“キャラ立ち”させないんです。だけど、もっと大きな意味で人類は描いています。文体について言うと、妙に品がいいですよね」。
話題は、あっちへ飛びこっちへ飛びしながら、星新一ならではのユニークなエピソードが飛び出し、笑いを誘います。たとえば名前について。星作品では、名前自体で人間描写されることを避け、“エヌ氏”が頻繁に登場します。しかし、多少人物を特定できる人もいるそうです。たとえば、R氏はrichな人という意味で父・星一氏、エヌ博士は野口英世氏のことではないかと。姉妹の名前の由来は、マリナさんが、出生当時成功した金星探査機の名前マリナー2号から、姉のユリカさんもロシア飛行士・ユーリイ・ガガーリンからだという話から、司会の田中二郎准教授の“二郎”は、南極観測隊に随行し生き続けた犬、タロ、ジロに由来するのだとの話題に及びました。すると、マリナ氏、「犬たちは、ペンギンを食べて立派に生き延びたと報道されましたよね。父はあのとき、食べられてしまったペンギンの命はどうなるのか、本来南極にいるはずもない犬なのだから、犬がいなければ食べられてしまうことはなかったのに、と言っていたんですよ」。
ユニークな発想は、発言ばかりか行動にも及んでいたようで、表札事件がそれです。「受験に際し、盗んだ表札がお守りになる、という縁起担ぎがありますが、我が家の表札も盗まれたことがありました。注文した新しい表札ができてくる間、蒲鉾の板を代用していたのですが、数日でそれも持っていかれまして、怒った父は、今度は蒲鉾の板の裏に“不合格”と書いて掲げたんです。父ながら、さすがだなぁと思いましたね」。また、星氏は近視だったので、度が進むたびにメガネを作り変えていたのですが、それを捨てずにすべて取り置きしていました。将来老眼になったときに、順に遡って使うと、言っていたそうです。

最後に、参加者から、1001編を超えるショートショートのアイデアについての質問が出ました。マリナさんによれば、特に悩んだり、イライラするようなことはなかったそうです。「月に平均3編書き上げるペースを26年間維持し続けたわけですから、芸術家というより、むしろ職人だったのではないかと思います」。
“ショートショートの神様”と呼ばれる星新一の秘密の一端に、触れることができたひとときだったのではないでしょうか。

2015/11/25